会員の皆様におかれましては、日頃より本学会の活動にご理解とご支援をいただき誠にありがとうございます。
昨年に実施の役員選挙とそれを受けての開催の臨時理事会におきまして、思いもかけず本学会の代表理事を拝命しました。大変微力ではございますが、前代表理事の八尾坂修会員また前事務局のみなさまの実績を継承し、本学会の円滑な運営と組織体制、若手研究者に魅力的な学術活動の環境整備など、本学会活動のますますの発展に尽くしていく所存ですので、どうぞよろしくお願いいたします。
本学会は1989年に設立されました。今年で35年目を迎えます。その設立の趣旨には「アメリカの教育に関する専門的・学術的知見を結集し、その知見を広く公にすること」とありますが、そのモチーフとなっているのが、アメリカの教育が伝統的に民主主義の理念とその理念に基づく民主的な社会の構築を追求し続けているはずだという強い信念かと思われます。本学会の設立に加わった諸先輩方は、大変な苦労をされて先ずは現地に赴き、アメリカ教育の最前線を紹介されてこられました。しかし、アメリカ社会の光と同時に陰の部分に論評を加えることも忘れませんでした。実際、アメリカ社会は多様性と極端な格差化の様相をもち、ときには人間の「根源悪」を見せつけるなど、一義的な解釈を許さない社会です。ただしそれでも同時に、このような民主主義の危機には直ちに声を上げその克服の可能性を探究し続けるという健全さも持ち合わせています。20世紀は「アメリカの世紀」だと言われましたが、21世紀において民主主義をめぐる「実験」は新たな様相を呈し始めたようにも思えます。私たちにとっても引き続き探究すべき課題かと思います。
他方、周知の通り、今年は生成AIの潜在性と可能性が人口に膾炙した特筆すべき年となるかも知れません。「アメリカ教育に関する専門的・学術的知見」の結集と公表も、凡庸なデータの蓄積と解析、その再構成に過ぎないのであれば、生成AIがよりスマートに代行してくれる時代がやってきました。しかし、生成AIには、私たちを突き動かすもの、観念(アイデア)の力はありません。少なくとも観念を生みだすのは私たちだと思います。進化する生成AIとうまく共生しつつも引き続き民主主義の理念を探究していくこと、このことを会員の皆様の協働において継続できるよう願ってやみません。
さて、本学会の第35回大会の開催は、関西学院大学の宮本健市郎会員にお引き受けいただき、11月11日に多くの会員の皆様のご参加により、盛況のうちに終了することができました。宮本会員をはじめ、大会準備委員および関西学院大学の関係者の皆様には大変なご尽力を賜りありがとうございました。本大会は5年ぶりの対面での開催でしたが、多くの若手・中堅研究者が集うとても活気に満ちた研究交流の場となりました。2024年度は埼玉大学での開催を予定しております。多くの皆様のご参加を期待しております。
最後になりましたが、4月より新事務局体制に移行しました。黒田友紀会員には前年度まで事務局の業務を担当されておりましたが、新たに事務局長をお願いしております。これまでと同様に、会員名簿管理、経理、紀要編集と刊行、HPの更新など、円滑な遂行に努めてまいりますので、引き続き皆様のご協力のほど宜しくお願い申し上げます。